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「うわっ、ここは何だよ……」僕が驚愕の声を漏らすと、友人のケンタは鼻で笑った。「これが『妄想族』の部屋だよ。汚部屋の特集、って感じだよね。」

僕たちは総合グループの一員として、さまざまな特集記事を執筆している。今回のテーマは「汚部屋」だ。いや、正直に言うと僕はそんな特集にあまり興味はなかった。だけど、担当編集者のミキさんに頼まれて仕方なく付き合ったのだ。

「ここに住んでるのは、妄想族と呼ばれる人たちなんだ」部屋を見渡しながらケンタが説明する。「彼らは日常生活の中で妄想にふけり、自分独自の世界を持っているんだ。」

「それは知ってるけど、まさかこんな汚い部屋に住んでいるとは思わなかったよ。」僕は呆れながら言った。壁には無数の紙が貼られており、そこには無数のアイディアやキャラクターが描かれていた。床はほこりと紙くずで覆われていて、歩くたびに気をつけないと何か踏んでしまいそうだ。

「中にはすごいクリエイティブな人もいるんだ」ケンタが棚に置かれた古いノートを拾いながら言った。「このノート、見てみなよ。まるで漫画の原稿みたいだ。」

それを聞いて僕はノートを手に取った。中を見ると、確かに詳細に描かれたキャラクターや世界観の設定がびっしりと書かれていた。妄想の域を超えて、まるで一つの作品として完成されているようだった。

「でもさ、こういう人たちがこの部屋でどうやって生活してるんだろう？」僕は疑問を口にした。

「うーん、生活してるって言えるのかな？」ケンタは肩をすくめた。「彼らにとってはこれがもう一つの現実なんだよ。現実世界よりも、妄想の世界で過ごす時間の方が長いんだ。」

そのとき、ドアがギィッと音を立てて開いた。現れたのは一人の若い女性だった。彼女は僕たちを見て、驚くでもなく、ただ無表情に見つめ返した。

「どうぞ、お邪魔しています」僕は何とか挨拶をした。「私たちは総合グループから取材に来ました。」

「知ってる。ミキさんから聞いてたから」彼女は簡単に挨拶を返し、部屋の奥に進んでいった。「取材なら好きにしていいよ。私は仕事があるから。」

「お仕事ですか？」僕は興味を抱いた。「何をされているんですか？」

「イラストレーター兼作家」彼女は淡々と答えた。「この汚部屋は私のアトリエでもあるんだ。」

彼女の言葉に驚き、僕とケンタは視線を交わした。こんな混乱した空間が創作の場となっているなんて信じられなかった。

「あの、失礼なんですが、どうして部屋をこんなに汚したままで？」僕は勇気を出して尋ねた。

彼女は笑いもせずに答えた。「この部屋は私の頭の中をそのまま映し出したものなんだ。考えやアイディア、キャラクターたちが雑多に存在している。それをすべて整然と並べることなんてできない。」

彼女の言葉に、僕は一種の感銘を覚えた。妄想族とは、ただの「夢見がちな人たち」ではなく、自分の内側の世界をリアルに表現し、生きている人たちなのだと理解した。

取材を終え、外に出ると、ケンタが口を開いた。「どうだった、妄想族の世界は？」

「驚いたけど、感心したよ」僕は正直な気持ちを述べた。「あれだけの荒れた部屋でも、彼らにとっては大切な場所なんだ。自分の妄想を形にするための一部だなんて思わなかった。」

「まあ、彼らのやり方だからね。俺たちはそれを記事にするだけが仕事さ。」ケンタはそう言いながら手帳を開いてメモを書き加える。「でも、これって意外にいいネタになるかもな。妄想族、汚部屋だけど創造の場としては超一流、とかさ。」

「それ、いいね」僕もメモ帳を取り出し、彼のアイディアをメモした。

総合グループのオフィスに戻ると、編集者のミキさんが待っていた。「どうでした、取材？」彼女はにこやかに尋ねた。

「すごかったですよ。汚部屋なんてただの散らかり放題の場所かと思ってたけど、あの部屋は彼らの創造の場でした。」僕は感想を述べた。

「記事に期待していますね」とミキさんは微笑んで言った。

その日、僕たちはオフィスで遅くまで記事を書き続けた。妄想族の創造力と汚部屋の関係を深掘りし、彼らの世界を多くの読者に伝えるために。

そして、出来上がった記事は大反響を呼んだ。「汚部屋に潜む天才たち」というタイトルの特集は、読者からの感想やフィードバックが次々と寄せられた。

その成功に、僕は妄想族の一員としての誇りを感じた。そして、ケンタと一緒に次なる特集のテーマを考え始めた。僕たちの冒険はまだ続き、次の未知の世界へと踏み出していくのだ。