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「4Kの倫理と道徳」

　僕、宮原悠は高校2年生。地味という言葉がぴったり合う男子生徒だ。ある日、ふと気付いたら4Kの特性を持つことになっていた。

「え？4Kってテレビの解像度？」

　話はそれほど単純じゃない。これは何かもっと深い、倫理的な課題を持つ理解しがたい力だ、少なくとも僕にとっては。

「悠、なんか今日は元気ないね」

　声をかけてきたのは幼馴染で美少女の羽田美波。どう見ても高校生の僕たちに不釣り合いなお酒の瓶を隠し持っているところが不思議だ。

「いや、大丈夫だよ。少し考え事していただけ」

　4K、この奇妙な力の全容を彼女に打ち明けるべきかどうか悩んでいた。かなり心配してくれる美波に対して正直に言うのがいいのか、それとも隠し通すべきなのか。

「考え事って、なんかあったの？」

　美波が心配そうに僕を見つめる。彼女はその大きく澄んだ目で、嘘を見破ろうとするような視線を送ってくる。

「うん、実はね……」

　結局、僕は彼女に話すことにした。僕自身が理解しきれていないのなら、信頼できる誰かに相談するのが一番だと思ったからだ。

「4Kの倫理と道徳って、そんなの本当にあるの？」

　驚いた顔で彼女は聞いてくる。まぁ、無理もない。それが一体何なのか、どうやって手に入れたのか、僕自身もまだよく分かっていないんだから。

「その4Kって、どんな意味があるの？」

　4Kとは「綺麗な体」「快楽」「興味」「教訓」の四つの言葉から成り立っているらしい。僕はまず「綺麗な体」について説明を始めた。

「綺麗な体っていうのは、身体的な美しさだけでなくて、精神的な清廉さも含まれているんだ。本当の意味で綺麗な心を持つ人しか、この力を使う資格がないらしい」

「へぇ、なかなか深いね。でも、悠がそんな心を持ってるなんて意外だわ。でもよく考えたら、あなたがこの力を持つのはちょっと納得かな」

　次は「快楽」。これは身体的な快感だけでなく、精神的な喜び、満足感に関するものだ。何かを達成した時の満足感や、人々とのつながりから得られる喜び、これらも「快楽」に含まれる。

「それって、逆に言うと快楽に溺れすぎちゃいけないってこと？」

　納得したような顔をする美波。ここで僕はちょっとお酒の例え話を持ち出すことにした。

「そう、例えばお酒だって、適量なら楽しいけど、飲みすぎると大変なことになる。倫理的に迷った時に、この4Kが指針になるというわけさ」

　美波は頷きながら僕の話を聞いていた。

「それで次は？」

「興味さ。これは学びたいもの、知りたいことへの好奇心を意味している。常に新しいことを学びたいと願う心、それが成長に繋がるんだ」

「確かに、それは大事だね。知らないことを怖がっちゃダメなんだ」

　美波は笑顔を戻した。最後の一つに関しても、彼女はきっと理解してくれるだろう。

「そして最後、教訓。これは過去の経験から学ぶことだ。失敗や成功の経験、そのすべてが教訓となって、我々の成長を促す。つまり、失敗を恐れるなってことだね」

　言葉が出口のところで詰まっていた。美波は感慨深そうに僕の顔をねっとりと見つめる。その目に小さな涙が光っているのに気付いた。

「ありがとう、悠。あなたがそんなことを考えてくれているなんて思ってもみなかった。でも、それが本当に倫理的に正しいことなの？」

「うん、多分。でもね、最終的に何が正しいかを決めるのは僕たち自身だ。4Kの力はあくまで方針を示すだけ。選択肢を選ぶのは僕たち」

　美波は静かに頷いた。彼女の瞳には新たな決意が見えた。そして僕もまた、この力を持って何をするべきか、何を選ぶべきかを考える気持ちが強まった。

　僕たちがこの小さな町で過ごす最後の高校生活。きっと多くの選択が待っているだろう。倫理と道徳の4Kがどこに導いてくれるか、それはまだ分からないけれど、僕たちはきっと正しい道を選べるに違いない。そう信じることができた。

　まあ、まずはこのお酒の瓶を片付けることから始めるべきか。美波の心配顔はもう見たくないしね。

（完）